三日坊主。
これはもう、私の代名詞。
何かを始めても、見事なまでに3日でフェードアウトしていく。
ジャーナリングしかり。 TOEICの勉強しかり。
実家に帰ると、
「継続は力なり」
と、小学校の先生が書いてくれた色紙が今でも飾ってあるが、それも虚しい。
見るたびに自分が情けなくなっていた。
そんな私が今、なんと1日5分のバイオリンと1日10分のジョギングを、10日間も続けている。
しかも、ただ続けているだけではない。
「やらないと気持ち悪い」というところまで来ているのだ。
一体、私の身に何が起きたのか? 自分の体験を振り返りながら、この奇跡の理由を整理してみたい。
4年間、週1回しか触れなかったバイオリン
そもそもバイオリンは、長女の習い事としてスタートしたものだ。
「年中からバイオリンを習わせる」なんて言うと、どこぞの優雅なお嬢様とセレブ妻の話に聞こえるかもしれないが、我が家の実態は全く違う。
小学1年生くらいから見事にやる気を失い、練習を嫌がる娘。
それを無理矢理引っ張って教室へ連行する毎週。
もはや、そこにあるのは「高い楽器を買ってしまった」という母の意地でしかなかった。
さらに、娘を連行していくうちに、まさかの私の方がバイオリンの連弾の響きに魅了されてしまったのだ。
「いつか娘と、優雅にカノンを連弾したい……!」
そんな身の程知らずの夢を抱き、あろうことか私自身もバイオリンを習い始めてしまったのである。
親のエゴ以外の何物でもない。
——しかし。
蛙の子は蛙というが、蛙の親も、見事なまでに蛙だった。
結局私も、週1回のレッスンの日しかバイオリンに触れないという、
部活なら即刻退部レベルの「幽霊部員生活」を4年も続けてしまっている。
最近は土曜日に予定が入ることも増え、バイオリンに触れるのは週1回どころか「月2回」になることもザラだ。
それなのに、仏のように優しい先生はこう言ってくれる。
「レッスン代は、実施した分だけでいいですよ」
……この底なしの誠意に、罪悪感がチクチクと胸を刺す。
罪悪感から生まれた「1日5分」の妥協案
そんな中、次のレッスンまで予定が詰まりに詰まって、なんと1ヶ月も空いてしまう事態が発生した。 さすがに1ヶ月、全く楽器に触れないのはまずい。
その時、先生の言葉が脳裏をよぎった。
「毎日少しでもいい。弾かなくてもいい。弓を持つだけでいいから、バイオリンに触れてみて」
……弓を持つだけ? 弾かなくていいの?
だったら、5分だけ。まずは、5分だけ弾いてみよう。
そう思って、4年目にして初めて、私は毎日の「練習らしきもの」を始めてみたのである。
弓がするーっと滑る、無我の境地
変化が起きたのは、3日目くらいのことだった。
バイオリンの弦の上を、弓がするーっと、信じられないほど滑らかに滑る感覚があったのだ。
「あれ? これ、めちゃくちゃ気持ちいい……!!」
時間が許す限り、ずっと弾いていたくなるような快感。
弾いているのは、名曲でもなんでもない、ただの単調な音階だけなのに、だ。
弦の振動を見つめ、そこから生まれる音だけを無心で聞く。
すると弾き始めて2〜3分後に、その「するーっ」という無我の境地のような瞬間が、たまに訪れる。
この得も言われぬ感覚。
それはまるで、
娘が赤ちゃんの頃のおむつ替えで、お尻からチョロッと出てきた謎の糸状のものを「なんだこれ?」とするするーっと引っ張り出した時のような。(※結果はえのきだった)
あるいは、子どもの耳かきをしている時、奥から超大物(耳垢)がごっそり取れた時のような。
まさに、あの「するーっ」という感覚なのだ!
さらには、愚直に音階だけを弾いているので、「曲がうまく弾けない!」という技術的なストレスも皆無。ただただ、弦と弓から生み出される音との対話を楽しむだけ。
「先生に申し訳ないから、とりあえず5分だけ」というきっかけが、
いつの間にか極上のマインドフルネスな時間へと変貌していた。
バイオリンの上達は置いておいて(苦笑)、しばらくこの時間を楽しみたいと思う。
ジョギングのきっかけは勝間和代さんの「VO2 Max」
では、もうひとつの奇跡「ジョギング」はどうだったか。
きっかけは、私が尊敬してやまない勝間和代さんが「最大酸素摂取量(VO2 max)」を意識していると知ったことだった。
VO2 Maxとは・・・
「エクササイズ中に体が取り込むことのできる酸素の最大量の推定値。健康寿命と総合的なフィットネスレベルの予測に役立ちます。」 (GoogleHealyhアプリより引用)
健康寿命を延ばしたいお年頃の私、猛烈に自分の現在値を測ってみたくなった。
そこで登場するのが、私の左腕にいつも巻かれている相棒、「Fitbit Inspire 3」だ。
夜中の細かな目覚めまで正確に測ってくれる睡眠トラッカーとして重宝しているこのスマートウォッチだが、実はアプリ上で「有酸素運動のフィットネススコア」という名目でVO2 Maxの推定値を計測できる。
しかし、数値を出すには過酷な条件があった。
「GPSを接続して10分以上走る。これを最低3回繰り返すこと」
え? 走るの? 歩くのじゃダメなんですか?
心がポキッと折れそうになるも、重ーーーい腰を上げて、とりあえず1回走ってみた。
……その10分の、なんと長いことよ。
「早く来い来い~~~、10分後!!」
何度も何度もFitbitの画面を見るも、時間はちっとも進まない。
いつもなら1日はあっという間に過ぎ去り、夕暮れ時には白目を剥いているというのに。
走っている時の時間は、完全に止まっている。
その体感時間の長さたるや、「終わりの見えない、娘とのエンドレスおままごとに付き合わされている時間」に匹敵した。
眠れるハムストリングスが目覚めた朝
初日の苦行を終えるも、やはり数値は表示されない。
「これをあと2回もしないと、算出されないのか……」という深い絶望に包まれる。
でも、「せっかく1回走って汗をかいたのだから、この苦労を無駄にはしたくない」という、もったいない精神が発動し、2日目、3日目と走ってみた。
すると——。 これもまた、3日目あたりから異変が起きたのだ。
走った後、疲れているはずの体が、なんだかフワッと軽い。
日中、立ったり座ったりするときの姿勢の保持も、明らかに楽になっているではないか。
——こ、これは……!! 筋肉の変化!?
我が下半身で長年放置されていた廃用「ハムストリングス」が、長い長い眠りから目を覚ましたのか!?!?
そして3回目を終え、お目当てのフィットネススコア(VO2 Max)もしっかりと算出された。
値は「33.8」という、年齢相応の極めてリアルな結果。とりあえず平均値で一安心。
同時に、Fitbitの画面を見るたびに「この数値を、もっと伸ばしてみたい」という欲まで湧いてきた。

最大酸素摂取量が少しずつ改善している
さらに、走った後に、GoogleHealthくんが、走りについて褒めてくれるのだ。
承認欲求をくすぐってくるシステム。我が脳はAIに完全に踊らされているが、それもまた一興?。

「体が軽くなる」という圧倒的な気持ちよさ。そして数値の可視化。
これらを得たくて、今では朝起きて走るのがすっかり習慣となってしまった。
私の三日坊主を撃退した「作業興奮」
この2つの奇跡は、なぜ私の身に起こったのか?
いろいろ考えた結果、いずれも心理学でいう「作業興奮」のなせる業ではないかという結論に行き着いた。
作業興奮とは
一般的に、「最初はやる気がなかった作業でも、実際に始めてしばらくすると、次第に集中できたり、続けたくなったりする現象」のこと。
たとえばこんなこと、ないだろうか?
・「面倒くさいな……」と思いながら部屋の片付けを始めたら、止まらなくなって何時間も断捨離してしまった。
・嫌々お風呂掃除を始めたのに、気づけば歯ブラシ片手にカビ取りに没頭し、ピカピカに磨き上げていた。
そう、私の「5分バイオリン」も「10分ジョギング」も、まさにこの「作業興奮」を利用していた。 「5分だけ」「10分だけ」と極限までハードルを下げて、まずは物理的に体を動かし始めたことで、脳が勝手にやる気スイッチを入れてくれていたのである。
ズボラでもできる!作業興奮を味方につけるコツ
とはいえ、この作業興奮を発動させるには、ちょっとしたコツが必要のようだ。
私が実践したポイントをご紹介!
1. 最初の目標は「小さく」する
まさに「5分だけ」「10分だけ」。物足りないくらいがちょうどいい。
2. 開始に必要なエネルギー(摩擦)をゼロにする
気合いや意志の力に頼ってはいけない。「環境」を構築するのだ。
【私の場合】
・バイオリンのフタを開けっぱなしにして部屋に置く(ひょいと取り出しやすくする)
・ジョギング用のウェアを着て寝る(朝起きてそのまま走れるようにする)。
3. 「いつやるか」のトリガーを先に決めておく
「時間が空いたらやろう」、これはほぼ「やらない」ルート。
時間になったら、自動的に動く、これを習慣化させていく。
【私の場合】
・朝8時になったらバイオリンをする(マンションの楽器規約上、朝8時~夜8時がOKのため)
・朝起きて、お茶とソイラテを飲み、排便を済ませたら走る(途中で便意を催したら大惨事になるため、これは必須ルーティン!)
「とりあえずちょっとやってみたこと」が、快感につながり、習慣化される。
自分だけの奇跡だ! と興奮したが、なんのことはない。
すでに脳科学や行動心理学で証明されているエビデンスだったのだ。
1日15分の「先取り貯金」が生活を変える?
朝の5分のバイオリンと、10分のランニング。
合わせて、たったの「15分」という時間。
ボケっとしていると、SNSをぼーっとスクロールしている間にあっという間に溶けてしまう時間だ。
それを、給料日の「先取り貯金」のように、まず真っ先に「自分のための行動」に充ててみる。
たかが15分。
人様に公表するには恥ずかしいくらい短い時間だけれど、
脳の「作業興奮」のスイッチを入れるには十分すぎる時間だ。
それが今、私のメンタルにもフィジカルにも、じわじわと、でも確実に効いている実感がある。
もう、あの実家の色紙をみても、情けなくならない気がする。
筋金入りの三日坊主の皆さん。
まずは騙されたと思って、「5分だけ」から始めてみませんか?
あなたの脳もきっと、最高の「気持ちいい!」を見つけてくれるはず!

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